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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)665号 判決 1957年2月22日

本籍

神戸市葺合区磯上通二丁目三番地

住居

同市東灘区住吉町浜新田九四五番地

会社社長

森本元造

明治三二年九月二日生

右に対する贈賄被告事件について昭和二七年一一月一八日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人本田由雄、同横田静造の上告趣意第一点について。

しかし、賄賂罪における「職務」に関してなした原判決の解釈は正当であり、所論引用の判例と相反する判断をしたものではない。論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨中には、判例違反をいう部分があるが、原判決は、事実上及び法律上の判断を加えた上、本件金二万円の交付が伊藤信太郎の職務に関する不法な報酬であると断じた趣旨であることが明らかであるから、原判決は、毫も論旨引用の判例と相反するものではない。その余の論旨は、原判決は法令の解釈を誤り事実を誤認したものであるというに帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。のみならず所論公団が、所論輸入実務取扱業者に対し輸入実務委託契約上の権利を行使することは、一面において私法上の権利行使であると同時に、他面において公団の法令上の権利行使であると認められるとすることは、当裁判所が昭和二七年(あ)第四八七一号被告人伊藤信太郎外一名に対する贈収賄被告事件の判決中に説示したとおりである。又、公団と所論下請業者との関係についても、下請業者は公団に対する輸入実務取扱業者の契約上の義務に関する履行補助者であるから、輸入実務委託契約上公団と下請業者との間に直接の法律関係を生ずるような特段の定がない場合でも、間接的には公団の輸入実務委託契約上の権利に服するものというべく、従つて、所論伊藤信太郎が公団神戸支所棉花課長として下請業者を監督指導することは同人の職務自体には属しないとしても、その職務と密接な関係を有し同人の職務に関するものと解するを相当とすることも、右判決に示されているとおりである。なお、原判決の維持した第一審判決挙示の所論伊藤信太郎の検察官に対する第一回及び第三回各供述調書の各抄本(その余の所論謄本又は抄本は、本件で証拠とされていない)並びに辻伊兵衛の検察官に対する第一回供述調書は、刑訴三二一条一項二号の要件を備えており、被告人の司法警察員に対する第一回供述調書は、第一審で被告人がこれを証拠とすることに同意した書面であることが窺われるから、同判決がこれらを証拠としたことに違法はない。されば論旨は、いずれも採用に由なきものである。

同第三点について。

所論は、事実誤認、法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判長裁判官栗山茂、裁判官谷村唯一郎は各退官につき署名押印することができない。裁判官 小谷勝重)

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